歯科医療の審美について
近年、歯の健康だけでなく、美しさも重視する人が増えています。それに伴い、審美歯科という言葉を耳にする機会が増えました。厚生労働省の規定では、歯科医院で標榜できる診療科目は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つですが、審美歯科が一般に浸透しています。そこで、いわゆる 「歯科」の視点から”審美歯科”について解説します。
審美歯科の定義
一方、「歯科:一般歯科と表記します」とは、虫歯や歯周病の治療、入れ歯治療など、一般的な歯科治療全般を指します。 口腔内の健康を維持し、日常生活に支障をきたさない程度の機能回復を目的とする治療を行います。審美歯科と一般歯科は明確な線引きがあるわけではなく、一般歯科の治療においても見た目を無視するということはありません。どちらの歯科医師にも、特別な免許や資格は必要ありません。しかし、審美歯科は美しさを追求することに特化しており、必然的に経験数や症例数に違いが出てきます。
治療科目 | 審美歯科 | 一般歯科 |
---|---|---|
ホワイトニング | 〇 | × |
セラミック治療 | 〇 | × |
ラミネートベニア | 〇 | × |
矯正治療 | 〇 | × |
ガムピーリング | 〇 | × |
虫歯治療 | × | 〇 |
歯周病治療 | × | 〇 |
抜歯 | × | 〇 |
入れ歯治療 | × | 〇 |
審美歯科では、見た目の美しさを重視した治療が中心となります。例えば、ホワイトニングでは、専用のホワイトニング剤を歯に塗ることで歯を白くします。セラミック治療では、天然歯に近い色や透明感を持つセラミック素材を用いて、歯の修復を行います。 ラミネートベニアは、歯の表面を薄く削り、セラミック製のシェルを貼り付けることで、歯の色や形、軽度の歯並びの乱れを改善します。
一方、一般歯科では、歯の機能回復を目的とした治療が中心となります。虫歯治療では、虫歯に侵された部分を削り、詰め物や被せ物をして歯の機能を回復させます。 歯周病治療では、歯周病の原因となる歯石を除去したり、歯周ポケットを洗浄したりすることで、歯周組織の健康を回復させます。また、歯を失った場合には、入れ歯やブリッジなどの治療を行います。
審美歯科と一般歯科の費用の違い
審美歯科治療は、基本的に保険適用外となるため、全額自己負担となります。これは、審美歯科治療が、最低限の機能性の回復ではなく、見た目の美しさを目的としていると判断されるためです。治療費は、使用する材料や治療内容によって大きく異なりますが、ホワイトニングであれば数万円、セラミック治療であれば1本あたり数万円から十数万円程度が相場です。ラミネートベニアや矯正治療はさらに高額になる傾向があります。 審美歯科治療は高度な技術と専門的な設備を必要とするため、費用が高額になる傾向があります。例えば、マイクロスコープやCTスキャンなどの高額な機器が使用されたり、熟練した技工士の技術料が発生したりします。
しかし、審美歯科治療だからといって必ずしも保険適用外になるわけではありません。噛む機能や咀嚼機能の回復を目的とした治療であれば、医療費控除の対象となる場合があります。 また、インプラント治療のように、医療費控除の対象となる治療もあります。 医療費控除とは、医療費の負担を軽減するための制度で、一定の条件を満たせば、確定申告を行うことで税金の還付を受けることができます。
一方、一般歯科治療は、基本的に保険適用となるため、自己負担額は治療費の1~3割となります。保険診療の目的は、あくまで「噛めるようにすること」であり、審美性や快適性は重視されません。そのため、保険適用となる治療内容や使用できる材料は限られています。ただし、使用する材料によっては保険適用外となる場合があり、その場合は全額自己負担となります。例えば、虫歯治療でセラミック製の詰め物や被せ物を使用する場合、保険適用外となり、費用が高額になります。また、保険診療と自由診療を併用することはできず、併用した場合は全体が自由診療扱いとなります。ただし、「保険外併用療養費制度」の対象となる治療であれば、保険診療と自由診療を併用することができます。
審美歯科のメリット
見た目が改善する
歯の色や形、歯並びが整い、口元の見た目が美しくなることで、自信を持って笑えるようになります。
自信が向上する
口元のコンプレックスが解消されることで、自分に自信が持てるようになり、積極的なコミュニケーションや社会活動に繋がる可能性があります。
口腔内の健康が促進される
歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを軽減できる場合があります。審美治療と予防歯科には密接な関係があり、審美治療を選択することで結果的に予防効果も期待できます。
金属アレルギーのリスクが低い
セラミックなどの金属フリー素材を使用することで、金属アレルギーの心配がありません。
歯の機能が向上する
セラミック治療では、しっかりと噛めるようになり、食事がしやすくなるなど、歯の機能が向上する効果も期待できます。
審美歯科のデメリット
費用が高い
保険適用外となるため、治療費が高額になる傾向があります。
治療期間が長くなる場合がある
矯正治療など、治療に時間がかかる場合があります。
施術による痛みや違和感
ホワイトニングで知覚過敏の症状が出たり、矯正治療で装置による痛みを感じたりするなど、治療に伴う痛みや違和感が生じる場合があります。
メンテナンスが必要
ホワイトニングは効果が持続しないため、定期的なメンテナンスが必要です。 セラミック治療なども、破損や変色の可能性があるため、注意が必要です。
歯を削る必要がある場合がある
ラミネートベニアなど、健康な歯を削る必要がある治療もあります。
衝撃に弱い
セラミックは衝撃に弱いため、奥歯に使用したり、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、破損するリスクがあります。逆に義歯によって残存歯ことがあるため、硬い素材には一長一短があります。
審美的な改善を希望する場合は審美歯科、機能回復を重視する場合は一般歯科を選択といえますが、審美歯科を標榜することは労働省で認められていませんので、単純に比較することはできませんが、歯科医院が患者さんのQOL向上に貢献することを目指して提供されている診療であるか否かで判断しましょう。