矯正治療

歯並びや噛み合わせの改善を目的とした矯正治療(正式:矯正歯科治療)は、技術の進歩とともに多様化しています。ワイヤー矯正だけでなく、マウスピース型矯正装置も登場し、年齢やライフスタイルに合わせた治療法を選択できるようになりました。矯正治療は、見た目の美しさだけでなく、口腔機能の向上、さらには全身の健康にも良い影響を与えます。 咬合の問題を解消することで、食べ物をしっかり噛めるようになり、消化を助けるだけでなく、発音や顔の輪郭にも良い変化をもたらします。また、歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病の予防にもつながります。特に、お子様の場合、早期に矯正治療を受けることで、顎の成長を適切に誘導し、将来的な深刻な問題を予防できる可能性があります。アメリカ矯正歯科協会では、7歳までに最初の矯正検診を受けることを推奨しています。

種類

矯正治療には、大きく分けて固定式可撤式の2つの種類があります。

固定式矯正装置

固定式矯正装置は、歯にブラケットと呼ばれる装置を接着し、ワイヤーを通して歯を動かす方法です。

メタルブラケット

最も一般的なブラケットで、耐久性に優れています。

セラミックブラケット

歯の色に近い色のブラケットで、目立ちにくいのが特徴です。

リンガルブラケット

ソーシャルリンガルブラケット: 前歯6~8本にのみ装着するブラケットで、従来のリンガルブラケットよりも費用が安く、快適に装着できます。 軽度から中等度の審美的な問題を解決したい方に適しています。

セルフライゲーションブラケット

従来のブラケットよりも摩擦が少なく、歯の動きがスムーズで、治療期間の短縮が期待できます。

可撤式矯正装置

可撤式矯正装置は、患者自身で取り外しができる装置です。

リムーバブルブラケット

軽度の歯列不正の改善に用いられます。

マウスピース型矯正装置(アライナー)

透明なマウスピースを装着することで歯を動かす方法です。代表的なものにインビザラインがあります。アライナーには、グリップ力を高めるためにアタッチメントと呼ばれる突起を歯に付ける場合があります。

機能的矯正装置

顎の位置や歯並びを改善するための装置です。

ヘッドギア

顎の成長をコントロールしたり、奥歯の位置を修正したりするために使用します。

パラタルエキスパンダー

上顎を拡大するための装置で、主に子供の治療に使用されます。

一般的な矯正治療と専門的な矯正歯科治療の違い

一般的な矯正治療は、歯並びの改善を主目的とした治療で、主に虫歯や歯周病のない健康な歯と歯茎を持つ方が対象となります。一方、専門的な矯正治療は、顎変形症や口唇口蓋裂などの先天異常、顎関節症、睡眠時無呼吸症候群など、より専門的な知識や技術を要する症例に対応します。専門的な矯正治療では、外科手術を併用する場合もあります。

矯正治療の費用

矯正治療の費用は、使用する装置の種類や治療期間、症例の複雑さによって大きく異なります。症例の複雑さとは、歯並びの程度、顎の骨格のずれ、治療に必要な処置などを指します。一般的に、30万円から70万円程度が相場とされていますが、複雑な症例では100万円を超えることもあります。また、治療を受ける地域や歯科医院によっても費用が異なる場合があります。 都会にある歯科医院は、地方の歯科医院よりも費用が高くなる傾向があります。さらに、矯正医の経験や技術力によっても費用が異なる場合があります。 経験豊富な矯正医は、より高度な技術を提供できるため、費用が高くなることがあります。

装置の種類費用相場
メタルブラケット30万円~70万円
セラミックブラケット40万円~80万円
リンガルブラケット80万円~100万円
インビザライン30万円~80万円
マウスピース型矯正装置(その他)17万円~55万円

矯正歯科治療の段階

矯正治療は、一般的に3つの段階を経て行われます。

1
計画段階

矯正医による精密な検査と診断を行い、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立案します。この段階では、歯型やレントゲン撮影、顔貌写真撮影などが行われます

2
活動段階

矯正装置を装着し、歯を徐々に動かしていきます。定期的な調整を行い、治療の進捗状況を確認します

3
保定段階

矯正装置を取り外し、歯が元の位置に戻らないように保定装置(リテーナー)を装着します。保定段階は、矯正治療の成功を長期的に維持するために非常に重要です

矯正治療のリスクと副作用

矯正治療は、一般的に安全な治療法ですが、以下のようなリスクや副作用が生じる可能性があります。対策として、正しい歯磨き定期的な歯科検診が欠かせません。

不快感

装置装着後や調整後には、歯の痛みや違和感、顎の痛みを感じることがあります。これは、歯や顎の骨に力が加わることによって起こる一時的なものです。市販の鎮痛剤で痛みを和らげることができます。
装置が口内を刺激することで、口内炎や唇、頬の内側の擦り傷ができることがあります。矯正用のワックスを使用することで、刺激を軽減することができます。
発音がしづらくなる、食べにくいなどの症状が現れることがあります。これらの症状は、通常、数週間から数ヶ月で改善します。

口腔衛生

装置装着により歯磨きがしにくくなるため、虫歯や歯肉炎、歯の脱灰(エナメル質の溶解)のリスクが高まります。正しい歯磨きと定期的な歯科検診、フッ化物洗口剤の使用などで予防することができます。

その他

歯根吸収(歯の根が短くなる) や歯の vitality(歯の神経の vitality) などのリスクがあります。
装置の素材にアレルギー反応を起こすことがあります。
矯正治療後、歯が元の位置に戻ってしまうことがあります(後戻り)。 後戻りを防ぐためには、保定装置(リテーナー)を指示通りに装着することが重要です。

矯正治療後のケア

矯正治療後のケアは、治療の結果を維持するために必須要件となります。

保定装置(リテーナー)の装着

歯が元の位置に戻らないように、リテーナーを指示された期間、指示された時間装着します。リテーナーには、取り外し可能なものと固定式のものがあります。

ホーレーリテーナー: ワイヤーとプラスチックを組み合わせた、最も一般的なリテーナーです。 耐久性があり、調整が可能です。
クリアリテーナー(エシックスリテーナー): 透明なプラスチックで作られたリテーナーです。 目立ちにくく、審美性に優れています。
固定式リテーナー: 歯の裏側に接着剤で固定するリテーナーです。 長期間安定した保定効果が期待できます。

保定装置(リテーナー)の清掃

リテーナーは、歯ブラシと中性洗剤 、または入れ歯洗浄剤 を用いて毎日清掃します。
週に一度、ホワイトビネガーに15分ほど浸け置きすることで、殺菌効果が期待できます。
熱湯や漂白剤、アルコール、研磨剤入りの歯磨き粉などは使用しないでください。
リテーナーを清掃する際は、専用のブラシを使用し、優しくブラッシングしてください。
清掃後は、リテーナーケースに保管してください。

口腔衛生の維持

矯正治療後も、虫歯や歯周病予防のために、正しい歯磨きと定期的な歯科検診を継続することが大切です。

定期的な検診

矯正治療後も、定期的に歯科医院を受診し、歯並びや噛み合わせの状態をチェックしてもらいましょう。

食事

硬いものや粘着性のあるものは避け、歯並びに負担をかけないように注意しましょう。

その他

スポーツをする際はマウスピースを着用するなど、歯を保護するようにしましょう。